初恋が君だなんて、ハードルが高すぎる。
じゃあまたね、と出て行った伊織先輩の背中を見てから、南雲くんが振り返る。
「誰?」
「元保健委員の、相田伊織先輩…」
「ふーん、仲良いの?」
仲良い…。
伊織先輩は友達が多いから、私が仲良いうちに入ってるかわからないけど…。
「私は仲良い……と、思ってる」
煮え切らない返事に、ふーん、とまたつぶやいた南雲くん。
「…どうかした?」
なんだか南雲くんがいつもと違う気がして、顔を覗いてみる。
「…別に?」
気のせい、かな。
気を取り直して、ノートの続きを書く。
チク、タクって時計の秒針の音だけが響くこの空間は、やっぱり緊張して。