初恋が君だなんて、ハードルが高すぎる。
「お、お待たせしました……」
「ん、じゃあ帰ろ」
いつも通り、斜め前を歩く南雲くんに着いて行く。
その背中は、いつもより遠い気がして。
…彼女だって、言ってくれた。
それはすごく嬉しくて、自分でもびっくりするくらい幸せで。
だけど同時に、切なくて。
やっぱり彼の特別になりたいなんて、欲張りな願望が生まれてしまって。
その願いはもう無視できないくらい、大きくなってきてしまって。
いつかきっと、溢れてしまう。
『どうして私を、選んでくれたの?』
聞いたらきっと終わってしまうこの関係。
その質問の答えが、好きだから、ってシンプルな答えだったら良いのに。
夕暮れの地面に伸びる南雲くんの影に、胸がきゅっと締め付けた。