初恋が君だなんて、ハードルが高すぎる。
「キミは夕陽ちゃんが好きなの?」
伊織先輩がそう言った瞬間。
「い、伊織先輩っ!」
どうしてもその先を聞きたくなくて、気付いたら大きな声が出ていた。
「乃愛ちゃんから何聞いたのかわからないですけど、心配いらないです…!」
「え…」
聞きたくない。
まだ、真実を知る勇気なんてない。
どこも好きじゃないです、なんて言われたら、立ち直れない。
泣きそうな私の表情に、伊織先輩は何か言いかけてやめた。
「…わかった、ごめんね邪魔して」
それだけ言って、私の頭をポンと撫でて。
背を向けた伊織先輩に、目線を落とす。