labyrinth
――…小学生も残りわずかといった
ある金曜日のこと。
帰りの会が終わって
みんながそれぞれにランドセルを
背負うような時。
無造作に開かれた筆箱。
中に入っている1円玉2つ。
誰のものかなんてそんなの
聞かなくても分かる。
あたしは特にどうするという
決定的なオチもないまま
それを1つ手にとってクラスメイトと
卒業制作の居残りに向かう。
もちろんお金が欲しくて
1円玉を盗んだわけじゃない。
なんでやったのか分からない。
ただ、その筆箱が晴哉のだって
分かった瞬間にはもう
体が勝手に動いていた。