バカと利口は紙一重~実話込み~
第一章

意外にアイツが恋をする


 「千亜希ぃ、一緒に帰ろ?」


 カバン持って帰ろうとしたオレを優(スグル)が呼んだ。

 このクラスで、いや、この高校全体で優柔不断の優と書いてスグルって思ってるのはオレだけかもしんない。

 た~ぶん「優しい」とか「優秀」からとって、優なんだって思うだろうよ。

 だってスグルはキラキラした、笑顔でオレの方に向かって歩いて来るんだ。

 生徒会長木村優の素敵な笑顔に釘づけになる女子は少なくない。



 ま~な、そりゃ分かるよ?

 オレだって女の端くれだからな。

 でも、真実を知ったら、ねぇ……




 「部活は?」

 「明日生徒会だから」

 「は?」


 オレはダマされねぇ!! 

 コレは優の手口だ。


 「今日は、ないんだろ? 生徒会」

 「そうだけど、深いことは気にしない。早く、帰るよ?」


 オレに拒否権はねぇのか?

 いつの間にか一緒に帰ることにされちまった。

 メンドクセェんだよなぁこういうアフターみてぇなことされるとさぁ。

 ほれ、素敵な笑顔に釘づけだったお嬢様方が薔薇のように美しい顔を、鼻息荒い鬼の形相に変えちゃって。


 どーすんだよこの後始末はよぉ!



 綺麗な薔薇には刺があるって、よく言ったもんだな、まったく。

 だけどもう、こうなれら優と帰るも帰らないも一緒。



 人の人生変えといて、テメェ少し懲りろよ!!



 とか思ってるオレの心中を察しもしない優は涼しい顔でニッコリ笑う。

 だから、いつもオレはため息一つで優の申し出、受け入れちまうんだよ。

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