バカと利口は紙一重~実話込み~


 えっ?

 優の顔がパッとオレの方に向く。

 顔にかかった髪が邪魔で、優がどんな顔してんのかは分からない。


 「ワッハッハッハッハ――――ッ!!」

 「うわぁっ!! イテェッ」


 唐突な大声にオレはビビって仰け反る。

 そしたら本棚に頭をぶつけた。


 「イテーッ」


 痛みがなんとかオレを現実にとどめてくれた。

 何が起こった?

 優はどうしたんだ?


 「見つけたぁっ!! ついに見つけたぞぉっ!!」


 優は、勝ち誇ったように笑っていた。

 楽しそうに、これ以上ないくらい、楽しそうに―――――

 オレの心配と、後悔と、反省と……

 優の役立ったものは一つでもあったんだろうか。




 ―――――あっただろう。

 廣子をこの変態から守ろうとして、コッソリ喋った優の秘密。

 それが優の心火に油を注いだ。

 廣子は……秘密を知って、どう思ったんだろう?

 分からないけど、ヤギとか言いながらクスッと笑ったあの顔。

 軽蔑するようでもなく、楽しんでる風でもなく……何というか……

 案外、うまくいくかもしれない。

 反省はすべきだけど、オレは後悔する必要、ないかもしんない。


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