バカと利口は紙一重~実話込み~

お前だけは雨に濡らさない

 翌日からの優の攻めはスゴかった。

 この男懲りてねぇ。

 ま~他人の痛みには百年でも耐えられるっつぅからな。

 流石にハンカチの端っこ噛んでキーィ、なんて言ってる阿呆はいないけど、やけに厳しくて鋭い視線を送る女子がいるのは事実。


 【昼飯は、みんなで仲良く食べるように】


 優にメールを送ってやると、盲目な彼も頭が冴えたのか昼食の時間には目つきの悪くなった女どもを誘ってみんなで飯を食っていた。

 オレは面倒ごとキライだからその輪には不参加。

 頭がいい優くんは、オレが送ったたった一通のメールで十も二十も理解したらしく……


 「上、届く?」


 この上なく爽やかな微笑みを浮かべ、黒板を消している学級会長に声をかける。

 掃除の時間には


 「一箇持つよ?」


 大きくふくれたゴミ袋を二つも持った男子柔道部主将、池田にまで手を貸した。

 そして最後に


 「いいよ玉置さん、あとは俺がやっとくから」


 と王子スマイルで玉置の手からホウキを受け取り、ササッと取り残したゴミを取る。

 そして自分がモトから持ってたチリトリとともに掃除用具入れへ片付けた。

 ワザとやってんの知ってるオレの目から見ても、さりげねぇ!!

 一方廣子はというと、美術室掃除だから教室にはいない。

 懲りてねぇのかと思ったが、あのことは結構薬になってんじゃん?

 しかし誰に対しても優しく誠実な好青年を演じてたら、肝心の廣子の目に優はどう映るんだろう。

 モテる男は辛いねぇ優くん。

 と他人事のように思ってられたのは三日だけ。

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