華は儚し


「…桐里…」


長い髪の女は全てを拘束されていて、


声のする方、俺の方を見るように乞うのだ。


「今助けてやるから」


縛られていた紐を小刀で切り、目隠しを外す。


「…宗十郎様っ!」


華奢な体を包んで、

美しい女の無事を見ているのは

助かる事よりも嬉しがるだろう。


「逃げるぞ、

たとえ無理だとしても諦めたくはない」


両腕に太夫を抱きかかえ、

逃げ道がないと悶絶するよりも、

火の道をただ進んで、


多少の火傷など気にするか。
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