華は儚し

しかしながら、

江戸の者は顔を隠してる桐里を睨むのだ。

世間知らずが、

と言いそうな勢いの眼光で、


「…移動しよう。桐里」


逃げるように別の場所へと移動した。


一輪の華は儚く散るよりも、

自然の成り立ちにて満開の華から

朽ちていくことを望んだ。


「口を慎むのだ。でないと…」


と、続きを言うつもりが、

目の当たりにするなど予想外であった。


若い女が大名行列を横切ってしまったのだ。

相手は分かっていたはずだ、

憶測ではあるが、

隣にいる顔の良く似た幼い男児がそばで泣いていたから、

実際に横切ったのは弟であり、

何らかの形でとらえられてしまったのだろう。
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