華は儚し

「…そこの者、

どこへ行く。町娘か?」


はっきりした声の持ち主は、

背後に立っていた立派な着物を着ている男性で

凛々しく綺麗な男性でいらっしゃり、


「えっと、どなたでしょうか?」


「…そなたは世を知らぬと申すのか?」


首をかしげた自分を、

くすくすと笑った彼が

そっと顎の布巾を外しなさる。


「艶やかな髪…美しく麗しい娘だ」


「…私は桐里といいます。

最近まで…霧里という名前で

太夫にて花魁をしておりました。

けれど、男性の相手をしたことがないのです…。

生まれて部屋に閉じ込められておりました」


「それはひどい…。

世にも気持ちがよく分かる」


「…貴方様も閉じ込められていらっしゃったのですか」
< 128 / 221 >

この作品をシェア

pagetop