華は儚し
「…そこの者、
どこへ行く。町娘か?」
はっきりした声の持ち主は、
背後に立っていた立派な着物を着ている男性で
凛々しく綺麗な男性でいらっしゃり、
「えっと、どなたでしょうか?」
「…そなたは世を知らぬと申すのか?」
首をかしげた自分を、
くすくすと笑った彼が
そっと顎の布巾を外しなさる。
「艶やかな髪…美しく麗しい娘だ」
「…私は桐里といいます。
最近まで…霧里という名前で
太夫にて花魁をしておりました。
けれど、男性の相手をしたことがないのです…。
生まれて部屋に閉じ込められておりました」
「それはひどい…。
世にも気持ちがよく分かる」
「…貴方様も閉じ込められていらっしゃったのですか」