華は儚し
牢が開けられてその女性と両手を握り合った。
「桐里よ。
…また世と話さぬか、明日でも明後日でもいい」
「…それは分かりません…。
しばらくは江戸という場所にいるのですが…、
逃げている身です」
「誰から逃げているのだ」
「遊郭にいた主人です。
また戻されたくはないから…。
外の世界を知らない私は今が幸せなのです」
「…正直な娘だ。
だが、
世はそなたが暇なとき会いたいと思う」
「私も、吉宗さまは
いろいろ知っていらっしゃるそうですね。
だから…そのたび教えてください。
簡単なことだとしても、知らないですから。
おりん様もご一緒しませんか?」
おりん様は苦笑いで諭すように言葉を置く。
「私は弟の面倒がありますので、
桐里だけで行ってください」
「…そうですか…」