華は儚し

「屋敷に行こう」

「はい」


「…心配したんだ。

自分の女が苦しめられているのではとばかり」


「え?」

「二度は言わない」

「ごめんなさい、もう一回です!」


顔が熱くなる自分は足を速めてみると、

桐里の足音が聞こえなくなってしまって

振り向いてみれば、


「宗十郎様、みてください!

三つ葉の詰草が四つの葉です!」


土手に土だらけになる娘は

満開の花を見せるように笑った。
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