華は儚し
小鳥のように聞こえる心音は、
世を虜にするばかり。
「恥ずかしいが…、
世は桐里が欲しいのだ。
吉宗、世の名は徳川吉宗。
幕府の将軍だ」
「…将軍様…だったのですか…」
「大奥に入らぬか?」
見る限りでは入るつもりは無いらしい。
しかし桐里は色役者に
捕まらせるわけにはいかない。
男は、娘と知ってて付き合ったに違いない。
涙を流させるわけにいかないだろう。
「…吉宗様…
私には運命を共にする人がいるのです」
言いたくないが、彼女を守るために。
「将軍の言うこと聞かぬというのか」