華は儚し
「ありがたいです、
私のおすすめの茶屋でも…きれいな方…」
「どうした」
「あそこの白梅の着物…」
指差す先の女は目を腫らして、
侍の風貌の男と江戸城に
向かって歩いているではないか。
泣きっ面の美人は、
どう見ても桐里だった。
化粧なしでも周りの者は目を奪われている。
「宗十郎…さ、ま…」
…桐里、その男は誰だ。
どうして泣いているのに
二人で歩いたりする。
隣の女の腰を抱いて桐里から離れた。
何故、意地でもいいから桐里を
迎えに行かなかったのか。
後悔ばかりしたんだ。