華は儚し

「桐里お嬢様は…

ここには戻りたくないと。

宗十郎様の前に現れてしまったら

ご迷惑をおかけするから、

そう手紙に書かれておりました故、」


「…連れ戻しに行くことは出来ぬのか」


吉宗、徳川吉宗だったんだ。


断れるわけがない、

絶対的な権力者だ。


桐島様は絶対に渡したくないと思うはずだ。

妻によく似た娘がようやく戻ってきて

大奥に送るわけがない。


なのに、

俺は相手を見破れない挙句

心から傷つけてしまった。


俺は役者。


幕府から嫌われるばかりで門前払いだろうよ。



「……桐島様がお怒りになる…」


「どう対処すれば…」

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