華は儚し

「…菊乃丞様…?」


「よかったです…」


汗だくになりながら

私を助ける貴方様が

私の小指を手当てし始めました。


「…どうして、

こんな…桐里様はてっきり大奥にいると」


「私は宗十郎様をわすれることなんて出来ないんです。

でもあの人は私は邪魔だと言いました」


「なぜ宗十郎にこだわる」


「…私を愛してくれると言ってくれたからです」


「だが愛していないじゃないか」


「良いです。

嘘でも嬉しいですから…

お願い、私を止めないで」


菊乃丞様の匂いが広がったのは、

彼に抱きとめられたからでした。


「だめだ…俺が許さない。

俺もお前と同じ、

お前がいないのは死にも等しい」


「え…それは…」


「恋だ、お前がとてつもなく恋しい」

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