華は儚し

一人の女は一人の男を愛し続け尽くしたが、

迎い入れされず死を選ぶ。


「桐島邸に向かう。

状況を報告しに来たんだ」


「…菊乃丞様のおかげで、

私は大奥に嫁ぐことが出来ます」


私はあの男をなぐり殺してしまいたい。


純粋な乙女を何だと思っている。


「新しい桐島園が建てられた」

「お父様はご無事ですか」


「ああ、元気でいらっしゃる。

桐島様は嘆いていた、

お前が江戸城にとらわれてしまうことを」


「…いいのです。お帰りできませんから」


山道を下り、

ようやく江戸の街が出てきて桐島邸の

農家前についたときには桐里の表情が変わった。
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