華は儚し

「もう夕暮れ、

そろそろ宗十郎様はお帰りになられるでしょう」


「…江戸は慣れたか」


「いいえ、なれませんでした。

でも大奥の方々はとても優しい人ばかりです」


「本当か?

女だらけで疲れないか?」


「遊女の郭で育ったんです。

女性ばかりですね」


「…そうだな」


戸が引かれる音を聞き、


「ただ今戻った」


無表情の桐里に、


「最後の別れをするよう絵島様に言われましたので」


と告げられた。

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