華は儚し

今ならと思って詰草をとろうと、

静かに反対の手を

ばれてしまわないように伸ばして、


「まだ話の途中だ」

「どうして、ですか!

私は一人でも平気なのです!

生まれてきてずっと

一人で育ったんですから」


舌打ちをついた田沼様が

格子穴に手を入れて

私の顎を引き寄せたのです。


「返さぬ。

この詰草、無性に腹が立つ。

燃やしてしまおうか」

「お、おやめください…」
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