華は儚し
複雑な念を浮かばせながら、

私も酒に口をつけようとした時であった。


「菊乃丞様、宗十郎様!

江戸城から文が届いております故、」


「…こちに」

送り主は絵島、

品のある筆跡でよからぬことが

書いてあるとは思えなかったのだ。

「遅かったかっ…」

だが私と桐島座にとっては

悪いことでしかなかったのだ。


「将軍様が正式に正室の申し出をなさるとは…」

「しかし、桐里も答えを渋っているそうだ」

嬉しくなってしまうことに嫌気をさしたか、


「…思いが強いせいか、

選択を迫られて居そうだな」


不利な言葉を言うのだ。

自分だって悪い方向であることを承知か。

「生島問うてみるか?」

「答えてくれるのか?

絵島をしたっておるか?とでも」


「遠まわしに聞くよりも

直に聞くべきだと私は思うのだがな」


「…ふむ」

話し合いの末、

私と二人で聞き出すことに至るそうだ。

にしても、

それは明日の話で男二人酒を飲みかわす。


「綺麗な女でないと嫌か?」

「…黙れ」
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