華は儚し
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何が何だかわからないのですが、
田沼様に献上して頂いた着物を着つけては
絵島様について行ったのでした。
「…あの子、
ここに入って数日でなのに
吉宗様の申し出をいただいたそうよ」
「さすが、花魁の太夫ってところ」
本来なら、
陰口を言われているのは辛いことでしょうけれど、
「気にしちゃだめよ。
ただ貴方の美貌に焼いているだけ」
「本質は皆の憧れですもの」
お優しい方々もいらっしゃり、
悪く言われることが慣れていますので、
それほどに心障というわけでもありませんでした。
「絵島様…
私をもらってくださりありがとうございます」
と声をかけたのですが、
上の空のような絵島さまが
聞く耳をお持ちでいらしてなくて、
落ち込みそうになりました。
「すまん…桐里、なんだ?」
「…あ、いいえ…」
もう一度言うのは恥ずかしくて、
本日の出入りの駕籠に乗るのでした。
従っていただけあって、
どこへ向かうのかを問われず
ついた先は宗十郎様が
いらっしゃるところでございました。
横目で尊敬している絵島様は
誰かを愛おしいように見る目で
歌舞伎座の建物を魅入っておりました。