華は儚し
初めて欲しいと思った女の身を抱き寄せ
仲間の男を睨むしか、
今俺が出来ることはそれぐらいしかなかった。
「そうじゅうろう、さま…」
「菊乃丞どういうつもりだ」
「どうもこうもない。
私は霧里の客で、心から欲しいと思っている」
「…お前が何をしたか分かっているのか…」
太夫の白い両手が俺の口を隠して、
「言いましたよ。私は花魁で、
生まれてはならない存在であったと」
情にそそられてしまいそうで、力を込めて抱きしめた。
「…済まない、俺はお前だけは嘘をつけないようだ。
惚れるなと言われようが、
惚れてしまった事実を変えられる訳がない」