華は儚し
「…なら、どうして…秋良様は
宗十郎様をお選びになられたのでしょうか」
霧里ならば、喜ぶだろうことを尋ねたか。
「郭の中の花魁は一時の夢を与えて…、
快楽を提供するのです。
人を好きになれば自分の愚かさを感じさせるため、
…宗十郎様をお選びなさいました」
俺は役者で好色めいた男だから、
傷を負わせた霧里が頼れる場所など秋良さんのみとなり、
お気に入りの人形が自分の傍を離れること恐れた男が計らったと。
「私なんて死んでしまった方がいいのに、
消えてしまいたいのに…
宗十郎様を見るたびその思いも消し去られてしまうのです」