イケナイ狼君の××。


マッサージ室にゲーム室…
プールに温泉にサウナ…
ほんといろいろありすぎな気がする!

また歩くこと30分。
やっと三分の二くらい案内が終わったらしい。
三分の二と言っても、まだ1階だけ。
2階へはまだ行っていなかった。


「それでは…2階に参りましょうか」

「うん!」

「うわー、久々だー…
めちゃくちゃ緊張する!」


ん?久しぶり?


「なんで久しぶりなの?
いつも来てるでしょ?」

「あ、申し遅れてました!
玄関から入って右に行くとドアがありますよね?
あそこが僕達の仕事場なもので」

「2階じゃないんだ!」

「2階は生徒会長と副会長と会計の方しか行けないんです!」

「つまりは、3年の成績トップ3の人達だけっすね!」


その中に仁も入ってるんだ…
見た目からは頭良さそうには見えなかったけどなぁ。
でもカンは冴えてる気がする。


「僕達上がっていいのかな…」

「いいだろ!
仁先輩に案内頼まれたんだし!」

「そうだよね…」


なんだか不安そうにする幸村。
ちょっと怯えているようにも見えた。


「そんなにビビんなってのー!」

「だ、だって!」

「…?」


やっぱり幸村は何かが怖いのかな?
そんなに怖いものが2階にあるの!?


「早く階段上れって!」

「ちょ、押さないで聖!」

「ひかり先輩も早く行きましょ!」

「う、うん!」


聖に背中を押されている幸村。

やっぱり何かある…?

そう思っていた時だった。


「…てめぇら…うるせぇんだけど」

「ひっ!」


階段を上ってすぐのところに、アイマスクをしながら寝っ転がっている人がいた。
幸村はすごく怖がっている様子。

なんでこんなところに寝てるの!?


「大丈夫ですか!?」


私は咄嗟にその人に近づいて声をかけた。


「ひ、ひかり先輩!
そんな大きい声出すと…!」

「へー、おもしろくなってきた!」


幸村と聖の声はまったく私の耳に入っていなかった。
私はこの廊下に寝ている銀髪の男の子が体調が悪いのかと思っていた。


「あぁ…?
声うるせぇんだよクソガキ…」


銀髪の男の子は上体を起こして、アイマスクをゆっくりはずす。
アイマスクの下にあった素顔は、すごく鋭い目だった。
だけどなぜか私には優しい瞳にも思えた。


「…あんた誰?」

「へ…?
あ!せ、瀬戸ひかりです!」

「あー…お前かよ瀬戸って…
確かに地味な格好してんな」


なっ…!
この人初対面なのに失礼な!
落ち着け私…
平常心平常心…


「そ、それはすみませんでした。
とりあえず、お身体大丈夫ですか?」

「はぁ?
お前なに言ってんの?」

「へ?」


銀髪の男の子は私を珍しい物を見るかのように見た。


「俺のどこをどう見てお身体大丈夫ですか?ってなるんだよ」

「え…だって、場所が場所なので、具合が悪くて倒れてるのかと思いまして…」

「ひ、ひかり先輩…!」

「ひかり先輩おもしれーわやっぱり!」


そう言うと、銀髪の男の子は私の目をジッと見た。
その瞳に引き込まれそうになるほど、その男の子の瞳は綺麗だった。


「…お前、名前なんだっけ」

「だから…瀬戸ひかりです!」

「ひかりねぇ……フッ、おもしれぇやつだな」


笑った!?
今笑った!?

第一印象がクールで無愛想で無口な人だと思ったから、まさか笑うなんて思ってなかった。


「こ、コウ先輩が笑った…!」

「ひかり先輩やるー!」

「…てめぇら、まだいたのかよ。
さっさと1階に戻って仕事しろ」

「は、はい!」

「ほーい!」


幸村と聖は足早に1階へと下りていった。

ふ、2人とも!?
私も行かないと!

そう思って立ち上がった瞬間、銀髪の男の子に腕を掴まれた。


「待てよひかり」

「な、なんでしょう…?」

「俺の部屋来い」


はい…!?
ど、どういうこと!?


「ついて来い」


銀髪の男の子はむくりと立ち上がって、広い廊下を進み始めた。


「ま、待ってください!」


何がどうなっているのか分からないけど、とりあえずついて行ってみよう!




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