イケナイ狼君の××。

ひかりside


無言で歩く銀髪の男の子の後をついて行くと、途中にいっぱい部屋があった。
全部英語で書いていて分かるものは分かるけど、分からないものもたくさんあった。

やっぱりここすごい…

そう思っていたら、銀髪の男の子は1つの部屋の前で立ち止まった。


「ここが俺の仕事場だ」

「ほうほう…」

「覚えとけよ。
今日から秘書になるんだろ」


立ち止まった部屋の上に書いてあった英語は<Counting Room>。


「ほら、入れよ」

「あ、はい…」


言われるがままに部屋に入ると、目の前に広がったのは…書類の山。
しかも足場もないくらい散らかっていた。
こんなに広い部屋なのに、こんなにも書類で散らかるものかと一瞬目を疑った。


「え、えーっと…」

「なにしてんだよ、早くソファー座れ」


足場ないのにどうやってソファーまで歩けと!?
それにソファーの上も書類だらけだし!

そう思っていたら、銀髪の男の子はなんのためらいもなく書類を踏みながらソファーに座った。

えぇ!?
大丈夫なの!?

銀髪の男の子の踏んでいった書類に目を落とすと、だいたい重要書類と書いてあった。


「あ、あの!
重要書類って書いてあるんですけど!?」

「あ?
あぁ…それ多分半年前のやつとか3ヶ月前のやつだな」


こんなに散らかってても書類は全部覚えてるんだ…すごい。
って、感心してる場合じゃない!


「いいからこっち来て座れよ」

「……」


ソファーの方まで行くのは無理と判断した私は、ドアの前にある書類を適当に集めてスペースを作って、そこに座った。


「ったく、ほんと変な女…」


あなたに変って言われたくないですっ!

そう思いながら部屋を見渡していると、大きいデスクの上に<会計 門田昴之心>と書いてあった。

か、かどた…こう…のしん?


「…なに見てんだよ」

「へ?
あ、いや、あなたの名前が書いてあったので…
そういえば名前聞いてなかったなぁと」

「あぁ…いんだよ俺の名前なんか」


よくないよくない!
なんて呼べばいいのかわからないし!


「自己紹介お願いできますか?」

「ここの名前見りゃあわかんだろ」

「い、一応です!」


私がそう言うと、めんどくさそうな顔をした。


「門田昴之心だ。
これでいいか?」

「あ、やっぱり読み方それでいんですね!
すごく変わっててかっこいい名前だなぁって思います」

「……」


ジッと私を見る門田さん。


「な、何か…?」

「ほんとに俺の名前かっこいいなんて思ってんのか?」


えぇ!?


「私は思ってることをそのまま言っただけですけど…」


私も門田さんをジッと見た。


「そうか…ふーん」


門田さんはそう言って、額まで上げていたアイマスクを目まで下ろしてソファーに寝っ転がった。


「おやすみ…」

「えぇ!?」


おやすみって!
寝ちゃうの!?


「ま、待ってください門田さん!」

「…苗字で呼ぶな」


再び門田さんは起き上がってアイマスクをはずした。
そしてポケットからタバコを取り出してタバコに火を着けた。


「ふー…」

「え!?タバコ!?」


未成年はタバコ吸っちゃいけないよ!

私は咄嗟に門田さんのタバコを取り上げた。


「なにすんだよ」

「未成年はタバコ吸っちゃダメですよ!」

「はぁ?お前マジで言ってんの?」


え…?

門田さんはキョトンとした顔をしていた。


「俺学年は一応3年だけど、歳はハタチだ」

「えぇ!?そ、そうなんですか!?」


見た目はすごく少年のようで、まるでハタチには見えない幼さ。

こんな人もやっぱり世の中にはいるんだね…

感心していると、門田さんは私を見て笑っていた。


「ははは!お前ほんとおもしれぇ奴だな。
嘘に決まってんだろ」

「え!?嘘!?」


どっちが本当なのかわかんないよー!


「俺の本当の歳はお前と同じだ」

「へ!?」


嘘!

驚きっぱなしの私を見てさらに笑う門田さん。
その笑い方は、本当に少年のようだった。


「マジだって。
飛び級で3年なだけだ。
3年になってからは2回留学してっけどな」

「2回…?
じゃあ入学した時から3年生だったってことですか?」

「そういうこと」


す、すごい…!
頭良くないと飛び級なんてできないよね?
でもなんで2回留学したんだろう…


「とりあえず同い年なんだし敬語いらねぇよ。
あと下の名前で呼べよ」

「昴之心?」

「その呼び方だけはやめろ」


門田さんは昴之心という名前にコンプレックスがあるらしい。

私はかっこいいと思うけどなぁ…


「じゃああだ名つけてもいい?」

「は?」


そうだなぁ…
昴之心だよね?
うーんと…


「あ!わかった!
のしんはどう?」

「お前正気かよ!?」

「もちろん!
決めた!絶対のしん!」

「チッ…」


眉間に皺を寄せるのしん。
だけど私の心は揺らがない。






< 14 / 55 >

この作品をシェア

pagetop