イケナイ狼君の××。

昴之心side


俺の部屋をひかりが片付け始めて2時間。
すごく頑張って俺の部屋を片付けている。
なんでそこまで必死で頑張ってるのか俺には分からないが、見ていて思ったのは…ひかりは強くて根性があるってこと。
最初に会った時も、俺を怖がらなかった。
あれだけ女に目つき悪いや怖いと言われてきた俺を、最初から受け止めてくれたのはひかりが初めてだった。


「ふぅ…」


汗をかきながら頑張るひかりを見て、俺自身も動きたくなってきた。


「おい、ひかり」

「なに…?」

「そろそろ昼だ。
俺となんか食いに行かねぇか?」

「えっ、いいの?」


それしか俺はやってやれねぇからな。
一緒に片付ける気力は俺にはねぇから。


「何が食いたい?
幸村に作らせる」

「悪いよ!
幸村だって仕事頑張ってると思うし!
私が作る!」

「お前作れんのかよ?」

「へっへーん!
これでも結構腕いいんだから!」


へぇ…意外だ。
でも片付けだってテキパキできてるし、料理もできるのかもな。


「それじゃあキッチン行くぞ」

「はーい!」


2人でキッチンへと向かう。
内心ひかりの作る料理に期待していた。













-キッチン-


「さて!
コウ何が食べたい?」

「俺?俺はー…ポーチドエッグ」

「はい?」


ひかりはキョトンとした顔で俺を見た。

まさかこいつ…ポーチドエッグ知らねぇのか!?


「あぁ…じゃあステーキ」

「はい!?」

「んー…じゃあフォアグラ」

「はぁぁあああ!!?」

「冷蔵庫にどっちも入ってんだろ」


ひかりはそっと冷蔵庫を開けて中を確認する。
そしてすぐに冷蔵庫の扉を閉じた。


「コウ…私高級料理なんて作れないから!
家庭料理しか無理!」

「家庭料理ねぇ…」


そんなん、もうとっくに味なんて忘れた。

俺は家庭料理とやらを多分物心つく前から食べてない。
だから味なんて覚えてるはずがない。


「家庭料理って例えばなに?」

「えぇ!?
もしかして食べたことないの?」

「悪ぃかよ」


俺がそう言うと、ひかりは少しシュンとした顔をした。
そして小さくなんかごめんねと言った。

ひかりってやっぱ優しいんだな。
こんな無愛想な俺だけど、ひかりといるとなんか自然と笑える。
こんな気持ちになったの初めてだ。


「食ったことねぇから、ひかりのが食いてぇんだけど?」

「ほんとに…?」

「おう。嘘ついてどうすんだよ」


シュンとした顔からすぐ明るい顔に戻るひかり。
単純と言えば単純だけど、そういうところ悪くないと思う。


「それじゃあねー、家庭料理の定番・肉じゃがでいきましょう!」

「肉…じゃが?」

「もしかして名前も聞いたことなかった!?」


ない…な。
肉じゃがってことは…肉とじゃがいも?


「美味しいよ!
コウの口に合うように頑張って作るね!」

「おう、頑張れ」


俺は対面キッチンの前にあるカウンターのイスに座ってひかりを見守る。
トントンと懐かしい音がキッチンに響く。
この音を聞いてるだけで眠れそうだ。


「ふんふふーん♪」


鼻歌を歌いながら楽しそうに料理をするひかり。
それを見て俺の感想。


「嫁にしてぇ」

「へ?なんか言った?」


ふと振り返ったひかりに思わずドキッとする。

な、なんだこれ…
俺いつもと違う。


「なんでもねぇ。
料理続けてくれ」

「はーい!」


ひかりはそう言ってメガネをはずした。


「ちょ、ちょっと待て光!」

「なに?」

「メガネかけろ!」

「メガネかけると曇るんだもん」

「……そうだな」


メガネをしていないひかりは、正直言うと目の毒だった。

やべぇ…かわいい…

おさげじゃなかったらもっとかわいいだろうなと、勝手に想像してみた。
やっぱりひかりに会ってから俺はおかしい。

今までこんな気持ちになったことねぇのに…
女なんてどいつもこいつもおんなじだと思ってたし。
でもひかりは違う気がするんだよな…


「コウー!
コウは薄味派?それとも濃い味派?」

「俺濃い方」

「俺は薄い方がいいかなー♪」

「うぉっ!?」

「え!?」


気づいたら、隣に鹿男が座っていた。

び、びっくりした…!


「コウ、もうひかりちゃん落としたの?」

「ちげぇよ!
あっち行けっての」

「だってめちゃくちゃいい匂いしたからさ!
お腹すいてたし!」


まったく…邪魔者がいると落ち着いてひかりを見てられねぇ…
まぁでも、鹿男にはいろいろ借りがあるしな…
なんも言えねぇのが腹立つ。


「ひかりちゃん!
薄くもなく濃くもない味でおねが……」

「はいわかりました!って、え?
バンビ先輩どうかされたんですか?」

「おい鹿男…どうしたんだ?」


鹿男がひかりを見ながら固まった。
しかも口を開けたまま。
こんな鹿男見たことなかった。

も、もしかして…
ひかりの素顔見て…!
やべぇぞ!




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