イケナイ狼君の××。
ひかりside
バンビ先輩が私の顔を口を開けながらジッと見ている。
「ど、どうしたんですか…?」
「……ちょっと待って…
ほんとにひかりちゃん…?」
「そ、そうですけど…」
私がそう言ったら、バンビ先輩がいきなり立ち上がって傍に来た。
そして私の肩に手を乗せた。
「ひかりちゃん…」
「な、なんでしょう?」
「俺本名鹿男って言うんだけどさ」
し、鹿男…!
すごい名前!
コウもそうだけど、生徒会の人って名前がかっこいい!
「俺もコウと同じく名前にコンプレックス持ってるけど、ひかりちゃんには鹿男って呼んで欲しいんだ。
呼び捨てでいい。敬語もいらない」
「えぇ!?」
いつものニコニコしているバンビ先輩とは違う、真剣な表情。
真っ直ぐな瞳に目が離せない。
「ひかりちゃん…いや、ひかり。
俺の彼女になって」
「…へ?」
「ちょ、ちょっと待て鹿男!」
今度はコウが立ち上がって私とバンビ先輩の間に入った。
ば、バンビ先輩どうしちゃったの!?
「落ち着け鹿男!
お前らしくねぇぞ!」
「女の子なんて誰でもいいと思ってた。
だけど、今思ったんだ。
俺、ひかりじゃなきゃダメだ」
「おいおい!」
え!?
私今告白されてるの!?
ど、どうすればいいの!?
コウが必死に何かをバンビ先輩に説得していて、私は1人でアタフタしていると、キッチンのドアが開いた。
「…お前ら何してんだよ?」
「じ、仁!」
現れたのは仁だった。
た、助かった…!
私は仁の傍へと行った。
「おい、どうしたんだよひか……」
仁は私の顔を見た瞬間に固まった。
「じ、仁?
どうしたの?」
「お前メガネしてねぇじゃん…!」
あ、そういえば仁にメガネはずしてるところを見せたことはなかった。
でもそんなに変わらないと思うけどなぁ…
「おい昴之心、説明しろ」
「俺かよ!?
つか、なんの説明すりゃあいんだよ」
「今の状況」
「状況…?
ひかりが俺のために飯作ってくれてるだけだ」
「はぁ!?」
仁の大きな声がキッチンに響いた。
「おいひかり!
それ本当か!?」
「ちょ、ちょっと仁!
落ち着いて!」
肩を思いっきり揺さぶられる私。
こんなに取り乱してる仁初めて…!
「私がお昼ご飯作って一緒に食べようとしてただけ!」
「それで?
なんで鹿男がいるんだよ」
「俺はただいい匂いがして、キッチン入ってみたらコウとひかりちゃんがいただけ。
それでひかりちゃんのメガネはずした姿見て…」
「見て…なんだよ」
だ、ダメ!
「鹿男!ダメ!」
「「「!!?」」」
今度は私の声がキッチンに響く。
そして3人ともすごく驚いていた。
「ひかり…今鹿男って呼んでくれた!?」
「おいひかり!
鹿男ともなんで進展してんだよ!?」
「チッ…」
鹿男は嬉しそうにしてるし、仁は驚いてるし、コウは怒ってるし…
もう…
もう……我慢できない!
「いい加減にして!
いいからみんなで肉じゃが食べるの!
わかった!?」
「「「……」」」
3人は固まったまま私を見る。
「返事は!」
「お、おう…わかった」
「うん…」
「…あぁ」
「よし!」
もうヤケだ!
またキッチンに戻って、肉じゃがの続き。
3人は大人しくカウンターのイスに座っていた。
――……
「はい!完成!」
「「「おぉ…!」」」
私の結構自身作肉じゃが!
まぁ、陸の教えがあってこそなんだけどね!
「私はここで立って食べる!」
「行儀わりー。
場所移すぞ」
仁はそう言って、キッチンの迎えにある大きなテーブルに肉じゃがを置いた。
別に座らなくたっていいのに…
鹿男もコウもそのテーブルに移って座った。
私も続いて座る。
「それじゃあいただきます!」
私がいただきますを言っている途中からコウはもう食べようとしていた。
「ちょっとコウ!
いただきます言ってない!」
「めんどくせぇ…」
「言わないとあげない!」
と言って、コウの肉じゃがを取り上げる。
「……いただきます」
「よろしい」
いただきますを言ってくれたから、肉じゃがを戻してあげた。
「2人も早く言って!」
「い、いただきます…」
「いただきます!」
2人が食べたのを確認して、私も食べる。
ん!
今日は一段とうまくできてる!
「うわ…うめぇよひかり…!
これが家庭料理の味か」
「よかったー!」
コウは珍しい物を見るかのような目で肉じゃがを黙々と食べる。