イケナイ狼君の××。
「ひかり料理上手い…!
今度からお昼ひかりに頼もっかな!」
「ありがとう鹿男!」
素直に言われると、やっぱり嬉しい。
料理陸から教えてもらってて良かった!
「……」
「?」
美味しそうに食べてくれる2人とは違って、仁は眉間に皺を寄せながら食べていた。
「仁、美味しくないなら食べなくて…」
「……」
よく見てみると、仁は肉じゃがに入っているグリンピースをよけていた。
ふふっ、意外と子供っぽいところあるんだ!
「仁!
グリンピース残さないの!」
「うるせーな!
グリンピースなんて美味しくねーだろ!」
「好き嫌いよくない!」
「うっせーうっせー!
…そんなことより、とりあえず行くぞ!」
「えぇ!?」
仁にいきなり腕を掴まれて引っ張られた。
そのまま走り出す仁。
「ちょっと仁!?」
「おい仁!」
「ひかり!」
仁はなにも言わず私を引っ張ってキッチンを出た。
そして2階へ行って、ある部屋の中へ入る。
バタン、ガチャ
部屋に入った瞬間、仁は鍵をかけた。
そして私をドアへと押し付ける。
「どうしたの…?」
「どうしたもこうしたもねーよ。
黙ってろ」
怒った顔をしている仁。
どうしてそんなに私が怒られているのか分からなかった。
「お前…昴之心になにもされてねーよな?」
「なにもされてないよ!」
「鹿男には?」
「全然何も!」
「…ならいい。
いいか、忘れるな。
お前はオレのしもべだってこと」
またそれ…!
何回そんなこと言われないといけないの!
「しもべって何?
私は仁にこき使われて死ぬの?」
「は?」
「少しぶつかっただけなのに、なんでここまで言われないといけないの?」
「……」
黙って私を見つめる仁。
その瞳には少し悲しさが見えた。
「私は仁の玩具でもなんでもないんだよ…?」
「そうだな…」
初めて見せる悲しい表情。
どこか寂しげだった。
「それじゃあ聞くけど、お前にとってオレはなんだ?」
「へ…?」
私にとっての仁…?
「…んなこと聞いてもまだ分かんねーよな。
長くいたワケでもねーしな」
「そう…だけど…」
真剣な表情に変わった仁の顔を見ていたら、なぜかドキドキしていた。
仁に聞こえそうなくらい鼓動がうるさい。
「まだ分かんなくていい。
つーか、その内イヤでもオレのしもべでいたくなる」
「え…?」
「オレがお前にそーさせるんだ…」
「!?」
仁はそっと私の唇にキスをした。
私は一瞬にして頭が真っ白になって、なにも考えられなくなった。
「…いいか、ひかり。
お前が本当のオレのしもべになるってことはな…オレの女になるってことだ」
「えっ…!?」
そしてまた私に優しいキスをする。
何がなんだかわからない状況でも、なぜか私は仁のキスが心地良かった。
キスなんて今までしたことなかったからわからないけど、仁のキスをすんなり受け止めている私がいた。
「オレはぜってーお前を手に入れるって自分に誓った。
お前と出会ったあの時から…ずっと」
「あの時…」
ふと中学3年生の時に、仁に助けてもらった時の記憶を思い出す。
あの時仁は公園でイジメられていた私を助けてくれた。
そしてジュースを奢ってくれて、話を聞いてくれた。
初めて…私を助けてくれた人だと思った。
「オレはあの時バカだったよ。
わかるはずねーのに、ひかりがオレが通ってる高校に絶対入ると思ってた」
「ふふっ…なにそれ」
「案の定当たったろ?
やっぱりオレ様はすごいな」
「もう!バカ!」
2人で笑い合う。
初めて仁と2人で笑った気がする。
「あ、仁…!」
「なんだ?」
「ち、近いんだけど…!」
「いいじゃねーか別に」
そ、そんなサラッと流さないでー!
こんなに男の子と至近距離になったことなんて無い私には心臓が持たない。
それに忘れてたけど、キスだってさっきした。
「もっかいキスしてやろーか?」
「や、やだ!」
「なんでだよ!
素直じゃねーなー」
「ち、違うから!」
仁が私から離れて解放してくれるまで…30分かかった。