イケナイ狼君の××。

ひかりside


走ってコウの部屋へと向かう。
…そして、また迷ってしまった。

ど、どうしよう…!
<Counting Room>なのは覚えてるんだけど…

またキョロキョロしながら廊下を歩く。
しばらく歩いていたら、1つのドアの前にコウがアイマスクをしながら立っていた。


「こ、コウ!」


傍に寄って話しかけてもコウの返事はない。

あ、あれ…?

ドアの上の文字を見ると、<Counting Room>と書いてあった。

やっぱりここコウの部屋だ!
でもなんでドアの前でアイマスク!?


「コウ?どうしたの?」

「…ん…」


も、もしかして…


「寝てる!?」

「すー…」


案の定コウは寝ていた。

立ちながら寝るって…!
しかもこんなところで!
でも初めて会った時も廊下で寝てたし…
癖なのかも…


「コウ!起きて!」

「…うるせーガキだな…」


ま、またガキって言われた!

初めて会った時もガキと言われた気がする。
コウはそっとアイマスクを上にあげた。


「あぁ…ひかりか」

「こんなところで寝ちゃダメだよ!」

「あ?ひかりが来るのおせぇから悪ぃんだろ」


え…もしかして私のこと待っててくれたのかな?

眠たそうに目を擦るコウを見ながら、私は胸がドキドキしていた。


「まぁ、戻って来たんならいい。
中入るぞ」

「う、うん…!」


何気ない優しさに顔がほころぶ。

コウって無愛想に見えるけど、優しいんだ…!

そう思いながら、2人で会計室に入った。


「ふぁ…眠ぃ」


部屋に入って早々、コウはソファーに寝転がった。


「コウは毎日どれくらい寝てるの?」

「んー…ずっと寝てていいなら一日寝る」

「一日!?」


それは寝すぎです…


「とりあえず目覚ましがわりにひかり、こっち来い」

「なに?」


言われた通り、コウの隣へと座る。
ジッと私を見るコウ。
その瞳に目を奪われる私。
少しの沈黙が流れたあと、コウの口が開いた。


「ちょっと目つぶっとけ」

「なんで?」

「あ、やっぱいい。
そのままジッとしてろ」


言われるがまま、ジッとする。
そしたら、いきなりコウの顔が近づいた。


「!?」

「……」


キスをされた。
不意打ちだったから、身体が固まってしまって身動きが取れない。
私が驚いたことに気づいたのか、コウはスっと唇を離した。


「…何驚いてんの?」

「え…!?」


コウの質問に戸惑う私。

何驚いてんのって…!
私今キスされたよね!?
も、もしかして夢!?

試しに私は自分の頬をつねってみた。


「う!いひゃい」

「プッ…!
何してんんだよお前」


笑うコウ。
頬はジンジンと痛んだ。

ゆ、夢じゃない…!


「こ、コウ…」

「なんだ?」


また試しにコウの腕を触ってみる。
感触は確かにあった。


「ゆ、夢じゃない…」

「は?あたりめぇだろ。
現実だ」


それじゃあさっきのも…!

ちゃんと現実だとわかった瞬間、自分でもわかるくらい頬が熱くなっていた。


「ゆでダコになってんぞ?」

「み、見ないで!//」


必死に手で隠した。

さっきもそうだけど、今日はどうしたの…!?
キスされるの2回目だし!
キスなんてしたことないし!


「お前の顔が見てぇんだよ。
手どけろ」

「やっ…」


強引に引き剥がされる私の手。
恥ずかしくてたまらないのに、ジッと見てくるコウの視線からは逃げられなかった。


「お前、そういう表情もするんだな…かわいいじゃん」

「へっ…//」


い、今かわいいって…


「なぁ…もっかいいい?」

「…!」


私はダメだと言う前にコウからの2回目のキス。
さっきよりも深くて、濃厚なキスだった。


「…ふぁ……んっ」

「…はぁ。
そんな甘い声出すなよ」


コウにキスされて、とろけそうになってしまう身体。
こんな経験は初めて。


「コウ…なんでこんなこと…するの?」

「…お前こそ、なんで抵抗しねぇんだよ」


そんなの…わかんないよ…


「お前には仁がいるのに、こんなこと俺としてていいのか?」

「え…」


コウのその言葉で一気に目が覚めた。


「じ、仁がなんで出てくるの!?」

「お前ら付き合ってんだろ?」


えぇぇぇぇぇええええ!!?
なんでそんな勘違いされてるの私!?


「ち、違うよ!
仁とはなんでもない!」


それにまだ会ってそんなに時間が経ってないのにそんなことありえない!


「ふーん、そうなのか…
仁のあんな表情今まで見たことなかったから、てっきりそうなのかと思ってた」


あんな表情…?




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