イケナイ狼君の××。


「なんでわかったんです!?」

「オレが惚れた女のことだ。
分かるにきまってんだろ」

「!//」


いきなり真っ赤な顔をするひかり。

オレなんか変なこと言っ…あ。
オレ今惚れた女って…!
やっぱひかりのこと…

気になるじゃなく、きっとひかりに一目惚れしていた。
確かに見た目は地味だ。
だけどオレはきっと、メガネの奥にある芯がブレない瞳に惚れた。


「と、とりあえず!
場所移すぞ!」

「は、はい!」


オレ達は近くの噴水公園へ向かった。
その道中、お互いなんだか気恥ずかしくて話せなかった。
だけどそれも心地よかった。
噴水公園に着いて、オレ達は噴水の近くのベンチに座った。


「…それでひかり」

「は、はいっ」

「これからはオレのこと仁って呼べ」

「仁…さん」


まったくコイツは…


「さんはいらねー」

「じ、仁」

「それでいい」


ひかりの頭をクシャクシャ撫でる。
ふわっとひかりの髪からいい匂いがする。
ドキッと鼓動が鳴った。


「ひかり…オレの女になれ」

「へ…//」


告白したことがない。
だけど精一杯オレなりに思いを伝える。


「お前に惚れた…
だからお前が欲しい」

「仁…//」


オレはそっとひかりに近づいてキスをした。
ひかりは抵抗はせず、すんなり受け止めてくれた。
唇を離すと、ひかりは顔を赤らめながら微笑んでいた。


「私でよかったら…お願いします」

「…おう」


優しくひかりを抱きしめる。
ひかりも抱きしめ返してくれた。
たった二日しか一緒に過ごしていない。
だけど時間なんてオレ達には関係なかった。

大切にしたい…
絶対守る、ひかり。

そう自分に誓った。










あっという間に時間が過ぎて、帰る時間になっていた。
別れ道の交差点。
繋いだ手をなかなかお互い離せずにいた。


「ひかり、明日も迎えに行ってやる」

「いいの?」

「おう。
彼氏…だからな」


オレがそう言うと、ひかりは優しく微笑んでくれた。
オレだけに向けてくれるその笑顔は、これで最後だった。


「バイバイ仁!」

「おう!また明日!」


ひかりが歩いていく。
オレはその後ろ姿を見ていた。
その時だった。
交差点で信号待ちをするひかりの後ろにさっきのヤツらがいた。

なにやってんだアイツら…

その瞬間、ひかりをイジメているヤツらがひかりの背中を思いっきり押した。

キィィィィィィ

耳が痛くなるほどの車のブレーキ音が聞こえた。

おい…待てよ…

不安になったオレは、ひかりの向かった方向へと走る。
人ごみを掻き分けて行くと、そこには…


「ウソ…だろ…」


血だらけのひかりが横たわっていた。
一瞬目を疑った。

なんで…
さっきまであんなに元気そうな顔してたじゃねーかよ!

身体が勝手に動いて、血まみれになったひかりを抱きしめる。
その時、イジメているヤツらの声が聞こえた。


「ざまぁだよな!
彼氏なんて作るからこうなるんだっての!」


オレのせい…なのか。
逃げていくヤツらを追いかけることはできず、ひかりに必死で声をかける。


「ひかり!
起きろよひかり!」

「……」


目を開ける様子はなかった。


「死ぬな!
死ぬなひかり!!」


自然と涙が溢れる。
その時、救急車が来た。
救急車にオレも乗って、ひかりにずっと声をかけ続けた。

ひかり!
死なないでくれ!
なんで…
なんでこんなことになんだよ!!











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