イケナイ狼君の××。
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「ひかり!一緒に帰ろーぜ」
あ…
これは夢…?
私の前にいるのは仁。
制服姿で、顔は少し幼い。
私は2年前に通っていた中学校の校門のところにいた。
もしかして…
中学校3年生の時の…
夢にしてはあまりに鮮明すぎて驚いてしまう。
こんな記憶なんて私にはない。
「今日もオレに付き合え」
強引に私の腕を引っ張っていく仁。
その瞬間真っ暗になった。
そして噴水公園の映像が映る。
なつかしい…
「ひかり、オレのこと仁って呼べ」
相変わらずの強引さ。
なぜこんな状況になっているのかまったく理解できないでいた。
「ひかり…」
優しく私の名前を呼ぶ仁。
夢なのに、ものすごくドキドキする。
「ひかり…オレのおん…」
なにか仁が大事なことを言いかけた瞬間、また真っ暗になってしまった。
そして自然と私は目を開ける。
「ん…」
さっきの夢…
仁は私になんて言おうとしてたの…?
ベットから起き上がると、隣で私の手を握りながらコウが寝ていた。
あれ?コウ…?
周りを見渡すと、コウの部屋だった。
ソファーに私は寝ていた。
「コウ?」
名前を呼ぶと、静かにコウは目を開けた。
「ひかり…!」
「私どうしたの…?」
「鹿男と話してる時にいきなり気絶したらしくてよ…
心配したぞ」
ギュッと手を強くにぎってくれるコウ。
すごく安心した。
「ごめんね…」
「いや、いい…
お前が無事ならそれで」
私もコウの手を握り返した。
その瞬間、チクリとまた痛む胸。
なんで…?
私コウが好きなはずなのに…
「ひかり?」
「…へ!?
な、なんでもないよ!」
「俺何も言ってねぇけど…?」
動揺してることバレたらダメだ!
「こ、コーヒー淹れよっか!」
コウの手を離して立ち上がる。
その時、強くコウに腕を掴まれた。
「ひかり」
「な、なに…?」
真剣な目で私を見つめるコウ。
思わず目を逸らしたくなった。
「お前さ…」
「……」
何を言われるかが怖い。
なんでそう自分で思っているのかもわからない。
「…いや、なんでもねぇよ」
「そっか…」
コウはそっと手を離した。
少し心の中で安堵する。
もしかしたら私…
事故で少し記憶がないのかな…
今まで記憶なんてまったく気にしないで生きてきた。
どうせ友達もいないし、思い出したくないことも多かったから。
だけどなぜか今は、どうしても思い出したくなる。
仁との欠けた記憶が気になってきた。
私仁にあの時助けられただけじゃなかったんだっけ…
思い出そうとしても頭痛に襲われる。
私自信の身体が拒否しているように感じた。
「はぁ…」
コウは彼氏。
仁のことなんて考えなくてもいいはず。
「ねぇコウ」
「ん?」
「好きだよ…」
「い、いきなりなんだよ」
コウは少し照れてそっぽを向いた。
やっぱり…痛い。
胸がチクリとまた痛む。
どうしたんだろう私…
さっきまでだったら、かわいいなって幸せな気持ちになれたのに…
今はまるで…
「ほら、早く仕事するぞ。
やっと俺の秘書になったんだからな」
「う、うん…」
いらないことは考えないようにしよう…
仁のことも…
私にはコウがいる。
そう思って、私は仕事に没頭した。