イケナイ狼君の××。
昂之心side
「ん……」
少し眉間に皺を寄せて眠っているひかり。
何か嫌な夢でも見てるんじゃないかと心配になる。
--数時間前…
「コウ!」
「ん…?鹿男どうし…
ひかり!?」
いきなり鹿男が部屋に入ってきたと思ったら、ひかりをお姫様抱っこしながら入ってきた。
ひかりはぐったりしている。
「どういうことだよ!」
「説明は後で!
とりあえずひかりに掛けるものない!?」
咄嗟にお昼寝用の俺のブランケットを出す。
鹿男はひかりをソファーに寝かせて、俺の渡したブランケットを掛けた。
「はぁ…」
「それで…何があったんだよ」
ひかりの隣に俺は座る。
鹿男は向かえのソファーに座った。
「コウにはまだ話してなかったんだけど…
多分今言う時だと思うから、言うけどさ」
「…?」
鹿男は仁が高校1年の時にひかりと出会った時のことを話し始める。
そんなに前から知り合ってたのか…
少しだけ仁に嫉妬する。
「それで、仁はひかりを初めて助けた人なんだけど…」
「だけどなんだよ?」
少し難しい表情をする鹿男。
「言っても仁を殴りに行ったりしないでよ?」
「は?
それは話しの内容によるな」
「頼むから!」
深々と頭を下げる鹿男。
なんだ…
絶対こんなことするような奴じゃねぇのに。
今日はひかりといい鹿男といい、様子がおかしい。
少しだけ胸がざわついた。
「…なんだよ」
「仁とひかりさ…付き合ってたんだ」
「…!?」
驚いて言葉も出ない。
待てよ…
ひかりは確か俺が初めてだって…
嘘ついてたってことか?
いや、ひかりに限ってそれはねぇよな…
「それでね、コウ」
「ん…」
「仁とひかりが付き合うってなったその日に…
ひかりが事故に遭っちゃって…」
「事故…?」
そんなことがあったのか…?
俺、ひかりのことまだなんも知らねぇ…
「仁との記憶だけが欠けちゃったんだ。
だからひかりは、仁と付き合ってたこと忘れてる」
「そう…か」
ひかりの過去を受け止めると自分に誓った。
だから受け止めようと努力する。
でも…なかなか自分の気持ちが追いついていかない。
頭が少し混乱した。
「仁はコウならひかりを任せられるって言ってたんだ」
「仁が…?」
やっぱりあいつ…ひかりのこと…
「だから…俺からも。
ひかりをよろしくね」
「……」
一瞬迷ってしまった。
本当に俺でいいのか…?
「コウ?」
「…あ、いや!
わかってる…俺が守る」
「そう…ならよかった」
これで心配もいらない。
それなのに、なぜか罪悪感が残る。
「なぁ鹿男」
「なに?」
「仁と…少し話しても大丈夫か?」
「うん、多分仁なら庭園にいるはずだよ」
庭園…
あまり他のところに行かない俺は、庭園の場所がわからなかった。
「もしかしてコウ…
庭園の場所わかんないの?」
「なっ…!」
おもしろそうな顔で俺を見る鹿男。
まったくこいつ…!
「それぐらい知ってる!
行ってくる!」
そう言って会計室を出た。