イケナイ狼君の××。
仁side
「仁先輩?」
「…あ、ワリー幸村」
「いえいえ!
どうかされたんですか?」
オレは息抜きに噴水庭園へ来ていた。
幸村と聖も丁度休憩していて、オレも一緒に混ざっている。
聖は1人でリフティングをしている。
幸村はオレの話相手になってくれていた。
「仁先輩、最近元気ないですよ?」
「そう見えるか…」
「はい、すごく」
やっぱり顔に出てたか…
さっきひかりへ言ったことを思い出す。
自分で決めた事だ。
だけど実際は納得いっていない。
昂之心もひかりを手放したくないように、オレも手放したくない。
だけど付き合ってるのは昂之心だ。
オレの出る幕じゃねー…
「なぁ幸村」
「はい?」
「お前から見て…ひかりはどういうヤツだと思う?」
いきなりのオレからの質問に、少し戸惑った様子の幸村。
だけどすぐ真剣な顔で考える。
「ひかり先輩は…
とても気配りができる人だと思います」
「それで?」
「それで…気さくだし、笑顔も素敵で。
仁先輩の隣にいるひかり先輩は輝いてました」
「!?」
いきなりオレのことを言われて驚く。
なんでオレが…!
「…なんでそう思う?」
「そうですね…
なんとなく、ですかね?」
優しく微笑む幸村。
なんとなく…か。
自分でも考えてみる。
オレにとってのひかりは…
いつもいてくれないとダメな存在だ。
傍に置きたい。
オレ自身も傍にいてやりたい。
そうオレが思っても、ひかりはどうなんだ…?
すごくひかりの気持ちが気になり始めた。
ひかりは覚えていないけど、オレが生徒会長室でひかりにキスした時…
オレを受け止めていた。
あの時は少しだけでもオレに惚れてくれていたかもしれない。
「……」
「…仁」
誰かに後ろから呼ばれる。
ゆっくり振り向くと、昂之心がいた。
オレの予想通りだ。
「昂之心?」
「話しがある」
そう言って、ベンチに座っているオレの隣に座る。
幸村は気を使って席を外した。
「なんだよ?」
「ひかりが…事故に遭ったって本当か?」
「…あぁ」
鹿男、喋ってくれたか。
「昂之心、お前がここに来ることわかってたよ」
「は…?」
「お前も不安なんだろ?」
「っ…」
黙り込む昂之心。
やっぱりか…
「ひかりを任されるのが嫌だったのか?」
「そんなんじゃねぇよ。
何も知らない自分に腹が立ってるだけだ」
「…そうか」
昂之心、成長したな…
昂之心はひかりと出会う前は、自分の事しか考えないヤツだった。
他人はどうでもいい、自分がよければそれでいい。
そんな自分勝手な性格で、オレや鹿男も困ってきた。
だけど今はひかりのお陰で…性格が変わりつつある。
ほんと、ひかりはすげーよ。
「昂之心、ひかりはな」
「お、おう…」
過去から現在までの事を思い出しながら話しをする。
ひかりの顔も思い浮かべながら。
「すげー真っ直ぐで、気持ちもブレない。
弱いところたくさんあるくせに強がる」
「……」
「だけど甘えた時は…すげーかわいいヤツなんだ」
あの時の表情を思い出す。
妖艶さが混じるあの瞳は、オレを虜にして止まない。
「頭を撫でた時、抱きしめた時、キスした時…
いろんな表情を見てもまだ足りない」
「仁…お前…」
…あ、やべー。
つい話しすぎた…
もっと不安にさせてどうするオレ。
「…あぁ、ワリーな。
とりあえずひかりを幸せにしろよ」
「…待てよ仁!」
その場に居づらくなって去ろうとしたら、昂之心がオレの名前を呼んだ。
「なんだ?」
「なんで引き下がる…
いつもの仁なら絶対奪いに来るだろうが!」
「……」
いつものオレ…か。
いつものオレでいられるなら、どれだけ楽かわかんねー。