イケナイ狼君の××。


着いて行った先は…
夢で見たなつかしい噴水公園だった。

なつかしい…
よく雪斗と雅哉と陸とお花見に来てたっけ…


「どうしたひかり?」


私の顔をひょこっと覗く仁。
その行動にドキッとしてしまう。


「な、なんでもない!//」

「そうか?
まぁ、とりあえずベンチ座るか!」

「う、うん…!」


仁に言われて噴水の近くにあるベンチに2人で座る。
すっかり辺りは暗くなっていて、噴水がライトアップされていた。

あれ…

ベンチに座った瞬間、また頭の中で昔のことがフラッシュバックする。
それと同時に頭痛が始まった。

『これからは仁って呼べ』

…!

昔の仁の顔が思い浮かぶ。


「ひかり?」


仁に名前を呼ばれてハッと我に返る。

『お前に惚れた…
だからお前が欲しい』

頭の中で仁の声が反響する。

私、そんなこと言われてたの…?


「うっ…」

「大丈夫か!?ひかり!」


少し身体がふらついたところを仁が受け止めてくれる。
触られているところが熱くてドキドキする。


「仁…」

「ん…?」

「私…中学校3年生の時、仁と何かあったの…?」


どうしても思い出せない。
仁の言葉は思い出せた。
だけど私自身がどう思っていたかわからない。


「ひかり…」

「お願い教えて…!」


難しい顔をする仁。


「それは…教えらんねーな」

「どうして…!」


すごくモヤモヤする。
教えてくれない仁に少し苛立ちも感じた。


「教える意味がねーだろ」

「へ…」


冷たい目で私を見る。
私は身体が凍ったように固まった。


「お前には昂之心がいるだろ。
過去のことなんて忘れろ。
特にオレとのことは」

「……」


それもそうだ。
私はコウと付き合ってる。
だから過去なんて思い出さなくてもいい。
だけど、なんでか腑に落ちない。
またこの前のように突き放すような瞳。
戻ったと思ったら、また冷たくされる。
私は動揺していた。


「じゃあなんでここに連れてきたの…」

「なんとなくだよ。
深い意味なんてねー」


きっぱり言われる。
ズキズキと痛む胸。

どうして…
どうしてそんな風に突き放すの…?
教えてよ仁…

心の中で仁に問いかける。
だけど口には出せなかった。


「ひかり、本当に昂之心が好きなのか?」

「えっ…」


さっきの冷たい目とは変わって、今度は寂しそうな目になる。
コロコロ変わる仁の表情に、私も戸惑いを隠せないでいた。


「どうなんだよ…?」

「…好き、だよ…」


そう言うと、さっきより悲しい目になる仁。

ねぇ仁…
なんでそんな顔をするの?
どうしてこんなに…私をかき乱すの…?


「それだけ聞きたかったんだよ!
そろそろ帰るか!」


仁は勢いよく立ち上がって深呼吸する。


「ほんとにそれだけなの…?」

「え…」


口が勝手に動いた。

あ…!

気づいた時にはもう遅い。
一度出た言葉は戻ってこない。


「なんでそんなこと聞くんだよ…」

「…ごめんね!
行こっか!」


私も勢いよく立ち上がる。


「…オレの心をかき乱すんじゃねーよ…」

「へ?なんか言った?」

「い、いや!
なんでもねー!」


…?

何かボソッと言った仁の言葉が気になったけど、これ以上聞けないでいた。

仁…






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