イケナイ狼君の××。


「コイツを一番綺麗な花嫁にしたクラスが優勝だ!」

「い、意味わかんないよ仁…!」

「お前は黙っとけ、後でちゃんと説明するから」


もう…そんなこと言われたらなにも返せないよ…!

私を抱き寄せる仁の手がグッと力が込もる。
仁に大丈夫だと言われているようで、少しホッとする。


「異論は聞かねーからな!」

「せ、生徒会長!」

「なんだ」


1人の生徒会の男の子が立ち上がった。


「ウエディングドレスを作るってことですよね?」

「そうだが」

「クラス対抗なのはわかりましたけど、全学年が参加するんですか?」

「そうだ」


えぇ!?
2年生だけじゃないの!?

頭が混乱する。


「ウエディングドレスなんて簡単に作れるものじゃ…!」

「クラスに1人は必ず手芸部がいるはずだ。
ソイツらを筆頭に作ればいい」

「ですけど…!」

「なんだ?
お前ら自信がねーのか?」


仁の言葉に黙り込むみんな。

無理もないよ…!
ウエディングドレスなんて簡単に作れないし、時間もかかるし…!
それに私のために誰も作ってくれる人なんているわけ…!

そう思った瞬間、仁がいきなり二つのポスターを違うホワイトボードに貼った。


「これを見ても、まだやらねーと言い張るか?」


仁が貼ったポスターに一気に視線が集まる。
見てみるとそこには…
豪華世界一周旅行と豪華クルーズ一週間旅行と書いてあった。


「生徒会長!それはなんですか!?」

「これか?
優勝したクラスへの景品だ」

「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」」」」


二度目の驚き。
私は驚きすぎて声も出なかった。

なんてこと考えるの…!
それにお金すごくかかるんじゃ…!

仁が言った内容はこう。
審判になる仁、鹿男、コウ、幸村、聖による審査で一番評価がいいクラスに豪華世界一周旅行をプレゼント。
しかもクラス全員。
そして私が一番気に入ったウエディングドレスを作ったクラスに、豪華クルーズ一週間旅行をプレゼント。
これもまた全員。
さらに、チケットは1人それぞれ一枚ずつだけど、家族と行きたい場合は仁に申請すると家族分のチケットももらえるらしい。


「豪華世界一周旅行は1人250万。
クルーズ旅行は1人30万。
これならやる気が出るだろう?」


ニヤリと笑う仁。
生徒会の人たちはわいわい盛り上がっていた。
その傍ら、私はポカンとしていた。

1人250万…30万…
そんな金額どこから出てくるの…

みんなは当たり前のように喜んでいる。
私だけがわけがわからないままでいた。


「企画書いろいろまとめて、明日は全校生徒に発表だ!」


おおー!と意気込むみんな。
こんなに淡々と進むミーティングに戸惑いを隠せない私。
そんな私のそばに鹿男がやってきた。


「ひかり、驚いてる?」

「そ、そりゃ驚くよ!
どういうこと!?」

「後で生徒会長室に集合。
俺と仁から説明するよ」

「……」


なにもわからないままミーティングは終了した。

















-生徒会長室-


ミーティングが終わって仁の部屋へ行く。

「さ、ひかり。
質問は受け付けるけど、反論は聞かねーぜ?」


ソファーに座るなり、仁がそう言った。
鹿男はコーヒーを淹れながら笑う。

反論ありまくりだよ…!
でも質問もいっぱいあるからとりあえず聞かないと!


「まず…あの景品はどこからお金が出るの?」

「なんだよ、そんな大したことない質問か」


た、大したことないって…!
私にとっては大したことあるよ!

動揺している私をなだめる鹿男。


「ごめんねひかり。
驚いたでしょ?」

「うん…」

「ひかりに言ってなかったから言うんだけど…」


鹿男が丁寧に説明してくれる。
実は仁のお父さんは警視総監。
年収2000万を超えるから、お金が余っているみたい。

余ってる…
そんなこと言ってみたい…

そして鹿男の両親はどちらも弁護士。
だから鹿男の家もお金持ち。
コウは片親らしく、お母さんが大学の教授。
幸村と聖の両親は歯科医さん。

す、すごすぎ…!
なにも言葉が思い浮かばない…!




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