イケナイ狼君の××。
「でも1クラス50人近くいるんだよ!?」
「問題ねーよ。
オレ達全員で力合わせて金出すんだ」
なんでそこまで…!
話しを聞いてもよく理解ができない。
「なんで私のことわざと目立たせようとするの…」
「そんなん、理由は一つだ」
「へ…?」
優しく微笑む仁と鹿男。
「お前のイジメを無くすためと、お前自身に自信を持たせるためだ」
「自信…」
私のことを考えて企画を考えてくれたのはうれしい。
だけど、みんなの前に出るほど私はえらくないし、生徒会にいてもなにもできてない。
「またいらないこといろいろ考えてんな?」
「いたっ!」
私のおでこにデコピンをする仁。
「なにも考えるな。
せっかく変わる機会を作ってやったんだろーが」
「でも私…!」
「でももクソもねーよ!
オレのしもべは黙ってオレの言うこと聞いときゃいんだっつーの」
え…
今オレのしもべって…!
久しぶりに聞いたその言葉に少しドキドキする。
最初に言われた時は嫌だったはずの言葉。
だけど今は嫌な気分にはならない。
仁と契約した時に聞いた言葉があるから。
私…
どうしたんだろう…
仁を見ていると胸がドキドキしてうるさい。
なんでこうなるかは薄々気づいている。
だけど、コウを裏切るわけにもいかない。
そんなことばかり考えていたら、頭がゴチャゴチャになってなにも考えられなくなってしまう。
だから仁への気持ちのことは考えないようにしてきた。
だけどまた前と同じく接せられたら…
どうしてもドキドキしてしまう。
仁のことばかり考えてしまう。
「鹿男、ちょっと席はずせ」
「はいはい!」
鹿男は静かに生徒会長室を出て行った。
え…ちょっと待って!
仁と2人きりになるのは…!
「…ひかり」
「はっ、はい!」
なぜか緊張して声が上ずった。
「どうしたんだよ?」
声が上ずった私を笑う仁。
もう…恥ずかしい…
「ひかりに1つ頼みてーことがあるんだ」
「なに?」
仁はそう言って、テーブルの上に一枚の紙を置いた。
見てみると、右下に署名と書いてあるだけのシンプルな紙。
「どうしたの?」
「これにサイン欲しいんだ」
サイン…?
「別にいいけど…
何に使うの?」
「文化祭!
ワリーことには絶対使わねーから安心しろ」
「う、うん…」
仁がそういうことする人じゃないってわかってるけど…
文化祭で使うって言っても、何に使うのかな?
聞いても言ってくれなさそうだし…
仁を信じよう。
署名のところに瀬戸ひかりとサインをした。
「これでいい?」
「おう、サンキュ!」
仁は嬉しそうに笑う。
や、役に立てたかな…?
それならいいんだけど!
仁の笑顔を見て、私も嬉しくなる。
「ひかり。文化祭のイベントのメインになる以上、みんなと交流しなくちゃならねー」
「うん…」
「お前なら大丈夫だ。
絶対な」
仁…
スっと仁の言葉が入ってくる。
そうだよね…
いつまでも逃げてちゃダメだ。
ちゃんと立ち向かわないと…!
「ありがとう…仁」
「お、おう…」
照れて頭を掻く仁。
そんな仕草や表情も久しぶりで、すごく愛おしくなってしまう。
私記憶戻ってからおかしい…
仁のことしか…
「ひかり…好きだ」
「へ?何か言った?」
「べ、別に!
なんでもねーっての!」
…?
何か言ってたような…
気のせいかな?
2人でいた時間は、長いようで短い時間だった。