イケナイ狼君の××。


…!?

何が起きているのか理解するのに時間がかかった。


「ん…!」


仁の唇の感覚。
ダメなはずなのに、落ち着いてしまう。
もっと欲しくなってしまう。


「はぁ…」


長いキスが終わる。

どうして…
なんでコウと付き合ってるってわかっててこんなこと…!


「お前はこれから先ずっと、オレのしもべだ」

「…なんでそんなこと言うの?」

「それは後でわかる」


スっと私から離れる仁。
身体の力が抜けそうになったけど、頑張って足を踏ん張る。


「ほら、行くぞ」


さっきと同じ優しい笑顔。

なんですぐ切り替えられるの…!?
私まだドキドキしてるのに…!

そんなことを思っている私に構わず、腕を掴んで強引に歩き始める仁。
私は素直に仁に着いて行った。









--……


校舎に入って2年生の教室がある2階へ行くと、教室からワイワイ楽しそうに文化祭の準備をする生徒の声が聞こえてきた。

はぁ…!
よし!

私は意を決して仁の後ろを着いて行く。
A組の教室を通った時、みんなの視線が一気に仁へと集まる。


「あ!生徒会長ー!」

「カッコイイ!」

「素敵ー!」


相変わらずの人気っぷり。
仁は校舎にほとんど足を踏み入れないため、見れることに喜びをみんな感じている。
それにルックスもカッコイイ仁はやっぱりみんなを惹きつける。


「お前ら、はかどってるか?」

「もちろんですよー!」

「今年も成功させましょう!」

「おう、もちろんだ」


悪魔のような仁とは真逆の、すごく頼りになるような仁。
仁はやっぱり先輩だと改めて実感した。
その時、1人の女の子が私に気づく。

あ…!

少し足が引ける。

怖い…!

何を言われるかとビクビクしていた時だった。


「生徒会長!」

「なんだ?」

「あの子誰です!?
めちゃくちゃ可愛い!」


へ…
い、今かわいいって…!

耳を疑う。
だけど確かにその子は私を指差していた。


「もしかして会長の彼女さん!?」

「え!
やっぱりそうなの!?」

「美男美女カップルー!」


フッとクールに笑う仁。

ちょ、ちょっと待って!
どうなってるの!?
私地味な格好してるのに…!


「そうだ。
オレの大切な彼女だよ」

「「キャー!!」」

「ちょっ…!仁!?」


仁まで変なことを言い出す。

なにがどうなってるの!?

あたふたしていると、1人の綺麗な女の人が階段を下りて私達へと近づいてきた。


「久しぶり、仁」

「おう!来たか!」


仁と親しげに話しをする。
少し胸がモヤモヤする。

もしかして仁の恋人…?


「あ、もしかしてこの子ー?」

「おう、カワイイだろ?」


綺麗な女の人は私にズイっと顔を近づける。

!?

びっくりして目を見開くと、女の人は笑った。


「ふふふ、そんなに驚かないで?ひかりちゃん♪」

「え…?
なんで名前知って…」


戸惑う私の手を優しく握った。


「初めまして。
コウがいつもお世話になってます」

「へ…?」


い、今コウって…!


「おっと、紹介遅れてワリーな。
コイツはドラコ。
3年でコウの姉貴だ」

「えぇ!?」


お、おおおおお姉さん!?

優しく笑うお姉さん。

こ、コウにこんなに綺麗なお姉さんがいたの!?
それにこの学校にいたなんて…!


「ちょっと!
仁、ドラコって呼ばないで!」

「いいじゃねーか。
全校生徒がお前のことドラコって呼ぶだろ?」

「それが嫌なんじゃないっ」


ど、ドラコ!?
お姉さんまですごい名前…!


「ど、ドラコ…さん?」

「ひかりちゃんは竜子って呼んでー!」

「り、りゅう…こ?」


さらに混乱する。

ど、どれがほんとの名前なの…?





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