イケナイ狼君の××。


「ったく、ドラコが変なこと言うせいでひかりが戸惑ってんだろ」

「アンタでしょ!」

「…?」

「ごめんねひかりちゃん!
改めまして、私の名前は門田竜子(かどた りゅうこ)。
竜子って呼んで♪」


竜子さん…!
ほんと素敵な人!

初めて私は女の人を美しいと思った。
それくらい竜子さんは綺麗。
艶やかなロングの黒髪、透き通った眼差し、そしてスタイル抜群。
非の打ち所がないくらいで、私には少し眩しい。


「あ、ちなみにね?
ドラコって言うのは、私の名前の竜をドラゴンにして竜子の子をつけるから
ドラコになったの!」

「自分で説明してどーすんだよアホ」

「ははは」


そうなんだ…!
姉弟ですごく珍しい名前なのかと…!


「あ、用事思い出した。
ドラコ、ひかりのことよろしく頼んだぞ」

「はいはーい!」


竜子さんの綺麗さに圧倒されていた時、仁はそれだけ言って去ってしまった。

用事!?
わ、私どうしよう…!

おどおどしていると、竜子さんが私の肩に手を乗せた。


「大丈夫だよひかりちゃん。
心配しないで」

「は、はい…」


優しく笑ってくれる竜子さんに慰められる。
少し安心した。


「1つだけちょっと気になったんだけど」

「は、はい!」

「コウと付き合ってるんだよね?ひかりちゃん」

「へ…」


コウの名前が出てビクッとする。
私は言葉がすぐ出てこなかった。


「…はい」

「私はてっきり仁と付き合ってると思ってたんだけどなー」

「へ!?」


またびっくりする。
仁の名前を聞いた瞬間、胸がドキドキして苦しい。


「な、なんで…」

「だって、仁が用事でこっちに来ることなんて絶対ありえないもの」

「え…」


どういうことかわからず戸惑う。


「ふふっ、ひかりちゃん気づいてないんだ?」

「はい!?」

「仁、ひかりちゃんを送り届けるためだけにこっちに来たんだよ?
用事あるとかって誤魔化してたけど!」


可笑しそうに笑う竜子さん。

そんなわけない…!
仁が私に今更そんな優しいことするわけ…


「まったく!
お互い焦れったいなぁ!」

「えっ?」

「その内わかるからいっか!
私のお節介はここまでにしとく!」


…?

やっぱりよくわからないまま、先へ進む竜子さんの背中を追う。

あ、そういえば!


「竜子さんっ」

「なにー?」

「さっき私に電話した人って竜子さんですか…?」

「あ、バレた?」


ニコッと笑って振り向く竜子さん。

やっぱり…!


「何か御用でした?」

「電話でも伝えた通り、2年B組に行くの!」


竜子さんの言葉を聞いた瞬間、足が止まった。
やっぱりどこかで怖いと思っている。
そんな私を見て、竜子さんは1つため息をした。


「もう、ひかりちゃんは!」

「ひゃっ!」


竜子さんがいきなり私に抱きつく。
私はビックリして身体が固まった。


「りゅ、竜子さん!?」

「ひかりちゃんはかわいいから!
自信持ちなよ!」

「そ、そんなこと…!」


地味な格好してるのにかわいいわけないし…!


「ほら、ちゃんと自分の顔見て?」

「えっ…」


竜子さんはポケットから鏡を出して私の前へ持ってくる。
鏡に写った私。
一瞬目を疑った。


「な…んで…」


いつの間にかメガネが取れていて、三つ編みも解けていた。
久しぶりにちゃんと見た素の自分を、一瞬自分だと思えなかった。


「仁のやつ、ほんと不器用なんだから」


仁…?

さっきの出来事を思い出す。

もしかしてさっき…
いつの間にか私のメガネも取って、三つ編みも解いてたんじゃ…

気づいた瞬間、勝手に身体が動いた。


「ひかりちゃん!?」

「竜子さんごめんなさい!
また後でちゃんと来ます!」

「…まったく。
世話がやける2人っ!」


久しぶりに思いっきり走る。
仁に会って伝えたくて。

私…やっぱり仁が…!





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