イケナイ狼君の××。

ひかりside


「はぁ…はぁ…」


校内中走って探しても仁が見当たらない。

もう生徒会の方に戻っちゃったかな…

少し疲れて足を止めた時、中庭にふと目をやると仁とコウが一緒にいた。

えっ…
なんで仁とコウが…!

そっと影から二人の様子を見る。


「早く行けよ仁」

「いいのか…本当に」

「あぁ、いんだよ…
だから最後に言え。
お前は…ひかりが好きなのか?」


え!?
わ、私のこと…!


「あぁ…好きだよ。
誰にも触れさせたくない。
誰のそばにも置きたくない。
それくらい好きだ」

「そう…か」


直接ではない告白。
仁の真剣な表情に目を奪われる。

仁が…そんなこと思ってくれてたなんて…

思わず涙が出そうになる。
必死に堪えていると、コウが私の方へと歩いてきた。

や、ヤバい…!

そう思った時にはもう遅く、コウに見つかってしまった。


「ひかり…!」

「ご、ごめんなさい…!
盗み聞きするつもりは…!」

「…いいんだよ」


優しく笑って私の頭を撫でるコウ。
その手は今までのどの触れ方よりも優しかった。


「仁探して来たんだろ?」

「そう…だけど…
コウ…あのね!」

「ひかり」


私の言葉を遮るように言葉を続けるコウ。


「お前と出会えて俺は本当の愛を知った。
ちゃんとした人の温もりも。
感情の大切さも…
それだけで十分だ」


優しい目をするコウの瞳に涙が溢れてくる。


「泣くなひかり。
俺はお前と付き合えて良かったと思ってる。
ひかりはどうなんだよ?」


そんなの…
言われなくたって…


「すごく…幸せだったよ…!」

「…よし。
その言葉が聞きたかった」


ふんわり笑ってまた優しく頭を撫でてくれるコウ。
泣くなと言われても涙は次々溢れてくる。


「お前と俺は今日から親友だ。
そのポジションは誰にも譲らねぇからな」

「うん…!」

「それと、前に朝俺に挨拶絶対するっていう約束忘れるな?」

「うんうん…!」

「仁になにかされたらいつでも相談しろ?
1人で溜め込むな」

「う…ん…!」


一言一言が優しくて身に染みる。

そうだよ…
お別れじゃないんだ…
私とコウは…これから親友なんだ…

そう思ったら、涙が自然と止まった。


「さ、行けよ」

「うん…!
ありがとうコウ…」

「あ、ひかり」

「へ?…ん!」


仁の元へ行こうとした私の腕を掴んで、コウは優しくキスをした。
あまりにも一瞬で、頭が真っ白になる。


「最後に1回だけ…悪かったな」

「ううん…!
ちょっとビックリしたけど!」


二人で笑い合う。
今この瞬間から私とコウは恋人同志ではなくなる。
だけど悲しくなんてない。
親友になるだけなんだから。
コウが私にとって特別なことに変わりはないし、
これから先も絶対変わらない事実。
だから大丈夫。


「行ってきます!」

「おう、頑張れ」


今度こそコウに背中を向けて仁の元へと歩く。

ごめんなさいコウ…
でも、ほんとに大好きだった…

心の中で精一杯の謝罪をする。
最後まで優しかったコウ。
最後まで強がっていたコウ。
長くいたからやっぱり少し無理していることはわかっていた。
だけどコウが私に気を使ってくれた。
だからそれに応えた。
それが私の…せめてもの恩返し。

これからもっと恩返しするから…
ありがとね、コウ…

何回も何回も、コウへの感謝の気持ちを心の中で言った。





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