イケナイ狼君の××。
ひかりside
ベンチで1人遠くを見ている仁。
話しかけようとした瞬間、いきなり仁が涙を流した。
え…
仁泣いてるの…?
静かに涙だけ流す仁を見て動揺する。
泣いているのに悲しそうじゃない。
逆に嬉しそうにすら見える。
「ひかり…」
私の名前を呟く。
その瞬間ドキッとして身体が動いた。
「ん…?」
「!」
物音で仁が私に気づく。
仁は涙を急いで拭った。
「ひかり…いたのか」
「う…ん」
「…こっち来い」
仁に手招きされて素直にそばに行く。
久しぶりにそばにいると、なんだか落ち着かない。
「なぁひかり」
「ん…?」
「オレ…今気づいたんだ」
今までにないくらい優しい表情で話をする仁。
そんな仁から目が離せないでいた。
「ひかりはオレにとって大きい存在で、絶対にかかせない存在でもある。
だからオレのものでいて欲しいって…」
「…うん」
仁の一言一言にドキドキする。
「お前が昂之心のものになっちまった時…
オレ、初めて胸が痛んだ」
「うん…」
「女に対してこんなこと思ったことなかったんだ…
だから動揺しちまって、何も考えられなかった」
そんなこと…思ってくれてたんだ…
「だからひかりを突き放すようなことしちまった。
冷たいことも言った…」
あの時、確かに私を突き放すようなことを仁は言った。
私はひどく心が痛んだ。
なんでか…それは今の仁の言葉にドキドキしている私が答えだ。
「だけど結局ひかりが好きで好きでたまらなくて…
抑えきれなくなっちまって、ひかりを奪いたくなったんだ」
「そう…なの…」
私もしかしたら…
それを望んでたのかもしれない…
「だけどひかりの幸せ考えたらって迷って迷って…
そんな時、昂之心がオレにひかりの気持ちを言えと言った。
それで昂之心は身を引いた…
その意味わかるよな?」
「うん…」
コウは私を気遣って身を引いてくれたんだ。
私のことを思って…
そんな優しいコウに胸がジンと熱くなる。
「今更かもしんねぇ…
だけど、オレはひかりが好きだ」
真剣な仁の瞳。
ドキドキしすぎて心臓が破裂しそう。
「お前が欲しい…」
「仁…」
昔言われたことと同じことを言われる。
あの時と同じく、私はすごくドキドキしていた。
そんなの答えは一つだよ…
「私も…仁が好き…」
「…!」
驚いた様子で固まる仁。
「ほんと…か?」
「う、うん…!」
「ほんとにほんとか…?」
「ほんとだって!」
もう何回も聞かないで!
恥ずかしい…!
自分でも顔が赤くなるのがわかった。
「やべー…嬉しすぎんだろ…」
仁はそう言って私を強く抱きしめる。
「仁苦しいよ…?」
「ワリー…
ひかりがここにいるって実感したいんだ…」
さらにさっきより強く抱きしめる仁。
苦しいけど、すごく幸せな気持ちになった。
「やべー…好きだ、ひかり…」
「は…ずかしいよ…//」
「言わせろ…
今まで言えなかったんだ…」