魔血の継続者

“ドクン”


頭を揺さぶるような大きな鼓動が心臓を鳴らし、エルヴィンは息を飲んだ。

同時に強い風が部屋の中を荒し、大量の紙が大きく宙を舞う。

右腕で顔を庇い、スゥ……と落ち着いたのを見計らって、窓を見た彼女の目は、驚きに満ちていた。


「…………」


紅い月明かりに照らされた金髪の青年が、窓の柱に手を掛け、今まさに侵入しようとする瞬間を目の当たりにしたからだ。

逆光で顔は見えないが、ボロボロで至る所に傷を負っている。

服もドロドロで、手も汚れている所を
見れば、多分顔も煤だらけだろう。


「……貴方、大胆なことするのね? どうやって登ってきたのかしら?」

「…………」


エルヴィンは冗談交じりで微笑して見せたが、青年は体勢を保ったまま微動だにしない。

会話が成立しないことから、暫し沈黙が部屋の中を渦巻いたが、それを青年自らがぶち壊した。



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