魔血の継続者
珍しい者もいたものだ。
命乞いをする者は、今まで腐る程見てきたが、自分から懇願して死にたいと申し出た男は初めてだった。
さすがに困惑して、エルヴィンは肩を竦めた。と、同時にあることに気がついた。
「貴方……本当に人間?」
「……っ!」
何か違和感を覚えたエルヴィンの質問に、青年はようやく人間らしい表情を見せた。
冷静な表情から一変。
驚愕し、または恐怖に満ちた表情に変え、青年は何を焦ったのか、咄嗟に片手で握っていた剣の柄を握った。
「待ちなさい。……ただの人間がこの魔界に来ることは出来ない。だから今の質問をしたのよ? 勘違いしないで」
「あ……」
窓から勢いよく部屋の中に入ってきた青年を言葉で制止させ、エルヴィンは一喝した。
青年は額に汗粒を浮かばせて、静かに闘争心を押さえていく。
物分かりがいいらしい。
エルヴィンは眉を潜めて、青年が剣の柄から手を離すのを待った。
「……事情を話しなさい。貴方はどうやってこの世界にきたのかしら?」
落ち着いた物腰ではあるが、力強い圧力を感じた青年は、彼女の言葉で剣を降ろした。