田中のくせに!!
「ギャーーーッ!!」
テレビ画面いっぱいに映った女の人に、絶叫した。
だって
その人白目剥いて口から流血してるんだもん!
「…おまえ、何でそんな怖いのにホラー借りてくんだよ…」
隣に座る田中は、呆れ顔。
「だ、だって、たまにあるじゃん?
ホラー見たい衝動に襲われる時……わ゛ーっ!!!」
女の人の幽霊が主人公に飛び掛かって、
あたしは思わず田中にしがみついた。
「もー無理!田中、怖いシーン終わったら教えてー!!」
そしてギュッと目を瞑る。
「おまえ…それじゃ意味ねーじゃん」
頭上でハアッとため息をつく田中。
しばらくして
「終わったけど?」
「ほんとに?」
そんな田中の声に、顔をあげると
「ギャァー!!!」
やっぱりアップの女の人!!
「全然終わってないじゃん!
田中のバカー!!」
「はは、騙されてるし」
「最悪っ田中!」
楽しそうに笑う田中の腕を、ボコスカ殴る。
「おいっやめろよ!」
「田中が悪いんでしょーが!」
「やめろって!痛てーな…」
田中がグイッとあたしの手首をつかんで。
二人の距離が、縮まった。