田中のくせに!!





「ギャーーーッ!!」



テレビ画面いっぱいに映った女の人に、絶叫した。




だって




その人白目剥いて口から流血してるんだもん!





「…おまえ、何でそんな怖いのにホラー借りてくんだよ…」




隣に座る田中は、呆れ顔。





「だ、だって、たまにあるじゃん?
ホラー見たい衝動に襲われる時……わ゛ーっ!!!」




女の人の幽霊が主人公に飛び掛かって、
あたしは思わず田中にしがみついた。




「もー無理!田中、怖いシーン終わったら教えてー!!」




そしてギュッと目を瞑る。




「おまえ…それじゃ意味ねーじゃん」




頭上でハアッとため息をつく田中。





しばらくして





「終わったけど?」




「ほんとに?」




そんな田中の声に、顔をあげると




「ギャァー!!!」




やっぱりアップの女の人!!




「全然終わってないじゃん!

田中のバカー!!」




「はは、騙されてるし」




「最悪っ田中!」




楽しそうに笑う田中の腕を、ボコスカ殴る。




「おいっやめろよ!」



「田中が悪いんでしょーが!」




「やめろって!痛てーな…」




田中がグイッとあたしの手首をつかんで。




二人の距離が、縮まった。







< 126 / 467 >

この作品をシェア

pagetop