田中のくせに!!
「ったく、力強いんだよお前は……」
バチッと、至近距離で目と目があう。
その瞬間、ボッと頬が熱を持ったのが、わかった。
「っごめん!!!」
すごい勢いでソファの隅っこまで、はなれる。
「…は?別に…いいけど」
あたしに手を振り払われた体制のまま、驚いている田中。
いつの間にか映画は、エンドロールに突入していた。
「あ…あの、あたしもう寝るわっ!」
デッキからDVDを取り出してケースにしまうと。
「おやすみっ!!!」
あたしは光の速さで自分の部屋にこもる。
「あー…おやすみ…」
ドアを閉める直前、そんな田中の間の抜けたような声が聞こえた。
…どうしよう……
田中絶対、「なんだアイツ?」とか思ってるよね。
でも…
そんなの、あたしが一番、そう思ってるよ。
…まだ、なんだかドキドキしてる。
さっき手首をつかまれた感触がまだ…残ってる。
「………。」
どうしちゃったの、あたし!?