田中のくせに!!
ホテルを出て、駐車場に何台もとまっているタクシーの中から、班の番号が書かれた紙が貼ってあるタクシーを見つけ出し、運転手さんに挨拶。
「よろしくね~」
運転手さんは50代後半くらいのおじさんで、名前は山里さんというらしい。
いい人そうでホッとした。
楽しい1日になりそう!!
…だけど……
「…た、田中」
タクシーで隣の席に座った田中に、おそるおそる話しかけてみる。
「…なに」
窓の外を眺めたまま、素っ気なく返事をする田中。
「い、いい天気だね!」
「…そうだな」
…いつも基本的に冷静な田中だけど
……なんだか今日は、いつもと違うような……
「…あ、あのー…」
「…ん?」
「…なんか、怒ってる?」
田中はチラリとあたしを見ると
「…別に」
それだけ言って、またすぐに窓の外に視線を戻した。
…絶対怒ってる。
こんなに不機嫌そうな田中ははじめて見たから、どうしていいか分からない。
…絶対、このカッコのせいだ。
あたしがメイクとかしてお洒落してるから、調子のんなって思ってるんだ。
…あたしも、部屋の子とかにカワイイって言ってもらえてちょっと…調子のってたのかな。
…田中がカワイイって思ってくれなきゃ、意味ないのに…。