田中のくせに!!
「お待たせー!」
ロビーに行くと、退屈そうにスマホをいじっている田中がいた。
「あれっ他の男子は?」
「たぶんもうすぐ来る。そっちこそ、他の女子は?」
「なんか友梨が急にお腹痛くなっちゃって。小夏も部屋にいる。
でも、たぶんすぐに来ると思う!」
「ふーん…」
その時、カバンの中のスマホが着信を知らせる音楽を奏で始めた。
と同時に、田中の手の中でもスマホが震える。
「あは、すごい偶然」
「だなー。つーかその着メロなに?森のクマさんとか」
「いいじゃん!かわいいでしょ?」
そんなことを言いながら二人同時に電話に出る。
「もしもし、友梨?」
『あ、まどかー?
ごめんね、今日一緒にまわれないや』
「ええ!?なんで!?お腹治らない!?」
思わず大きな声を出すと、田中がチラリとあたしを見た。
『いや、お腹は全然大丈夫なんだけどね?急に小野くんから二人でまわろうって言われちゃって。
班でまわるって言ったんだけどぉ、小野くんが最後の夜は二人っきりで過ごしたいって言うからぁ~♡』
電話の前でクルクルと髪をいじる友梨の姿が安易に想像できて、あたしはコッソリため息をついた。
「わかったよ、了解。じゃぁ小野くんと楽しんで」
『うん!☆あと、小夏もやっぱり別の子と回るって☆』
「は、はぁ!?」
小夏まで!?