田中のくせに!!
「あ~わかった!」
不機嫌そうな田中と、不満気な顔のあたしの真ん中で、ポンッと手を打つ旭さん。
どうやらこれ、癖みたい。
「じゃ、まどかちゃんにオッケーもらえたら、いいんだな!?」
「…え!?」
あたし!?
「まどかちゃ~ん!」
旭さんは戸惑うあたしの両手を取り上げ、力強く握った。
「頼む、俺今マジで行くとこないんだ…!
愛する彼女と喧嘩した上、弟にもこんなに冷たくされて…可哀想だと思わない!?」
「…は、はい…」
か、顔が近い…!
「ね?お願い、まどかちゃん」
ウルウルと潤んだ二つの瞳が、あたしを真っ直ぐに見つめる。
……なんか
可哀想、かも…
「…まぁ、あたしの家じゃないですけど…
あたしは別に…大丈夫です」
「マジで!?」
パァッと旭さんの顔が輝く。
…なんか小学生、みたい。
「やった~!ありがと、まどかちゃん!」
「…おい周防、おまえ何言ってんだよ?」
旭さんをあたしから引き剥がしつつ、田中が横目であたしを睨む。
「こんな奴いたらウルセーだけだぞ?」
「おい光!兄貴に向かってウルセーとはなんだよ!?」
文句を言いつつ、嬉しそうな旭さん。
「まぁ、彼女さんと仲直りするまでなら別に…住む所ないと困るし」
「お前なぁ~…」
深い深いため息をつく田中。
こうして
あたしと
田中と
田中のお兄さんと。
奇妙な3人での同居生活が、スタートした。