田中のくせに!!
「…あー、そう、用事。
ちょっと顔かして」
そしてサッサと背を向け、歩いていってしまう田中。
「「いってらっしゃーい♡」」
…怪しげな笑顔の二人に見送られ、あたしも慌てて席を立った。
「これ忘れてったろ」
まだ皆教室でお昼を食べているのか、人影の少ない廊下。
田中が気怠そうにポケットから取り出したのはアパートの鍵。
黄色いイルカのキーホルダーが、あたしのって証だ。
「俺今日委員会で帰り遅くなるから」
「すっかり忘れてた!
ありがとうー!!」
危うくアパートの前で待ちぼうけをくらうところだった。危ない危ない。
「…じゃ、そんだけだから」
そして教室に戻ろうとした田中は、ドアに手をかけたところでピタッと動きを止めると。
「…言っとくけど、俺んちで犬とか飼ってねーからな」
…怒ってらっしゃる。