田中のくせに!!





放課後の、校門前。



たくさんの生徒で賑わうそこも




なんだか今は



2人だけの世界みたい。






「…一歩を踏み出すのが、怖くて。


でも、沖野さんへの気持ちは毎日強くなってく一方で



どうしていいか分からなくて




…どう、沖野さんに接していいか分からなかった……」





岩槻くんが、そっと莉恩ちゃんの体を離す。






「…でも、もう無理だ。


これ以上自分の気持ち抑えられないし…抑えたくない。





…俺は沖野さんが好きです。




こんな俺でよかったら





付き合ってください…!」






莉恩ちゃんの瞳から、ひとつ、大粒の涙が零れて。





「…はい……!!」





ギュッと岩槻くんに、抱き付いた。






ワァッ…






その瞬間、巻き起こる拍手。





2人は少し驚きながらも、幸せそうに微笑みあって、もう一度





お互いの背中に、腕をまわした…。








「…泣きすぎだろ」




「だ、だって〜…い、いい話だ〜!!!」





人目も憚らず号泣するあたしの前に、ズイッと差し出されるハンカチ。





「…つかえば」



「田中〜…女子力高すぎかっ」




そんなことを言いつつ、有難くそれを受け取り…





「おいっ!!鼻噛むなよ!?」



「え?あぁ、ゴメンゴメン」





青ざめている田中。





まったく大袈裟なんだから〜






チラ、と2人を見ると




仲良く手を繋いで、校門を出て行くところだった。







…よかったね、莉恩ちゃん。岩槻くん。






…ちゃんと乗り越えて


伝えあって




…繋がった。






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