田中のくせに!!
「…光、もう行こっか」
花凛ちゃんが険悪なあたし達のムードを感じ取ったのか、
柔らかい声で田中を呼んだ。
でも、田中はそこを動こうとせず
何か言いたげにあたしをじっと見つめて…睨んでるだけ。
「光~、どうしたの?」
花凛ちゃんが白くて細い腕を、田中のそれに巻きつけた。
「ていうか、今日うち、泊まっていってよ」
…ダメだ。
もうこれ以上あたし、ここにいたくない。
「…行こチャラ男」
「えっそれって俺のこと!?」
突然歩き出したあたしに、なんだかんだついてくる瀬名晴人。
「ちょっ、待ってって、はえ~よ~」
そんな瀬名晴人の声に振り向くこともなく
ただただ、人で賑わう夜の街を、縫うように歩いて
…恐る恐る後ろを振り向くと
もう二人の姿は人ごみにまぎれて、完璧に見えなくなっていた。